近年、越境電子商取引小売輸入(以下「CBEC小売輸入」)は、海外の栄養補助食品を中国市場に参入するための重要なルートとなっています。
一方で監督管理当局の注目点も変化しています。従来の「輸入可否」の審査から、原料の属性、配合とラベル、輸入資料、国内での営業・広告宣伝などへと段階的に拡大しています。
敏感成分又は機能性原料を配合した海外栄養補助食品にとって、確認すべきポイントはもはや「海外で販売できるか」だけでなく、中国に輸入した後、完全で真実かつ一貫性のある資料をもって製品の適法性を証明できるかどうかが主な課題となります。
2025年8月、上海市市場監督管理局は2025年「消費を守る」強化キャンペーン(鉄拳行動)の典型事例を公表しました。
事例の会社は、香港法人の中国側代理人として、CBECネットショップの運営と国内アフターサービスをを担当していました。同社は中国国内の営業場所で、原産国が日本である中国語ラベルのないNMN(β-ニコチンアミドモノヌクレオチド)含有製品を販売し、同時にネットショップで「病気の治療機能」に関する広告を掲載していました。監督管理部門は関連違法行為に対して法に基づき行政処罰を下しました。
この事例で注目すべきは NMN そのものではなく、次の点です。それは海外企業がより注目すべき監督管理トレンドを反映しています。
即ち、CBEC 小売輸入だからといって、海外市場の商品ポジションと宣伝スタイルをそのまま国内で通用させることはできないです。
たとえ海外で合法的に流通している栄養補助食品であっても、中国に持ち込む際には製品属性、ラベル表示、宣伝表現及び国内経営行為などのコンプライアンス要件を遵守しなければなりません。言い換えれば、「海外で合法=中国市場での経営が当然コンプライアンス準拠」というわけではないのです。
2025年に発表された「食品安全全チェーン監督管理の強化に関する意見」では、越境EC小売輸入食品のネガティブリストを作成し、調整メカニズムを構築する方針が打ち出されました。
この方針は海外の栄養補助食品企業が注目すべき点内容です。ただし現時点で、国家レベルの正式文書には、越境の栄養補助食品向けの「リスク原料」に関する具体的なネガティブリストは公表されていません。 そのため業界で言われる「重点注目原料」を単なる「輸入禁止原料」と理解することはできません。
現行法規制体系、監督管理事例及び業界実務経験に基づき、上市前に特別な事前審査を実施すべき原料は下記の通りです。
例:
ミルクシスル、ヨモギ、ソウパルメット、アシュワガンダ、セイヨウメギ、エピロビウム・パルウィフロルム、ムイラプアマ、ダミアナ、カモミール、センナ、カラグアラシダ抽出物など。
注目ポイント:
· 植物の由来および学名
· 使用部位
· 抽出プロセスおよび溶媒
· 原料の仕様および品質基準
· 原産国における食品として使用される法的根拠
例:ケルセチン、ベルベリン、レスベラトロール、アスタキサンチン、5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)など
注目ポイント
特に区別が必要:「植物抽出物」≠「高純度単一成分」
ある物質が植物に天然に存在することは、分離、精製、または特定のプロセスによって製造された高純度成分を、そのまま通常の植物原料として判断できることを意味しません。
例:NMN(β- ニコチンアミドモノヌクレオチド)、NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)、エルゴチオネイン、グルタチオン、NAC(N - アセチルシステイン)、α- リポ酸(ALA)など
注目ポイント
これらの成分は海外の栄養補助食品市場で広く見られますが、中国市場へ進出する際は下記を重点的に確認する必要があります。
原産国に使用される法的根拠+製品上市販売記録+製品品質安全資料など
例:葉酸、パントテン酸などの栄養強化剤管理は特定の食品カテゴリに適用;
メラトニン、補酵素 Q10 は保健食品原料目録に収載済み
注目ポイント
中国市場での適合性判断には、具体的な製品区分、使用量、配合、適用標準を総合的に評価する必要があります。
ヒント:
「重点注目 ≠ 輸入禁止」。上記の原料カテゴリーは、企業が中国市場に参入する前に専門的な事前審査を行うべき方向性を提案したものであり、関連成分を含む製品がすべてCBEC(越境EC)小売輸入を通過できないことを意味するものではありません。
具体的な輸入申告、検査および資料要件は、製品、輸入モード、申告税関口岸および実際の管理状況によって異なる場合があり、関連要件は実際の輸入時の所轄税関およびその他の主管部門の具体的な要求を基準とします。
「重点注目原料」を含む製品については、輸入段階で問題が発生してから資料を補完するのではなく、事前にコンプライアンス資料の準備を行うことをお勧めします。
1.まず確認:原料が原産国で合法に使用されていることを証明する
状況に応じて、原産国当局による食品原料としての承認根拠、主管機関発行の自由販売証明書(CFS)、食品衛生証明書、原産地証明書、物流輸送記録、食品生産許可証、製品基準および関連する品質安全資料などを準備します。その目的は、当該原料および製品が原産国において真実かつ合法的に使用されていることを証明することです。
2.次に照合:製品資料が完全かつ一致しているか
製品配合、原料名称と仕様、製造企業、外国語ラベル、中国語ラベル、試験報告書および輸入申告情報を重点的に照合します。提供された資料に明らかな差異がある場合、その後の検査や資料補完のリスクが増加する可能性があります。
3.最後に注目:国内販売時の宣伝行為
ECプラットフォームの商品詳細ページ、広告およびその他のマーケティングコンテンツも中国の関連要件に準拠する必要があり、海外製品が元々強い機能性を持っているからといって、疾病予防・治療といった食品分野では適用されない表現を直接使用することはできません。越境の栄養補助食品のコンプライアンスは「輸入前」だけでなく、製品が中国進出後の経営全プロセスにわたって管理する必要があります。
前述の「重点注目原料」に加え、企業はもっとハッキリ見極めるべき「赤線」があります。それは、中国が食品への使用を明確に禁じている物質です。
例えば、2025年11月4日、市場監督管理総局は認定通知を発表し、食品への違法添加とされる「ヨヒンビンおよびその誘導体」、さらにそれを含む「カビンダ樹皮」などの物質が「有毒・有害な非食品原料」に属することを明確にしました。
この監督管理の事例により、中国の現行食品安全監督管理体系において食品への使用が明確に禁止されている物質、有毒有害な非食品原料、または法により添加が許可されていない物質については、「境外での合法使用」を中国市場参入の根拠とすることはできません。
したがって、製品が中国市場に参入する前に、中国の食品安全監督管理の「赤線」に触れるかを重点的に排查する必要があります。
海外の栄養補助食品にとって、CBEC 制度がもたらすのは市場参入の便利さであり、国内販売時の食品安全と国内営業のコンプライアンス義務が免除されるわけではありません。
特に「重点注目原料」を含む製品については、中国市場参入前に、原料の由来、原産国での合法使用根拠、製造プロセスおよび品質仕様、製品配合、輸入申告資料、ラベル内容、プラットフォームページおよび市場宣伝について総合的に評価し、関連情報が完全、真実、かつ一致していることを確保することを推奨します。
したがって、企業が真に注目すべきのはもはや「この製品は海外で合法か?」ではなく、「中国進出後、関連要件に適合することを証明できるか?」という点です。
最後に下記について補足として強調します。
本稿で言う「重点注目原料」は国家主管部門が正式に発表した輸入禁止・制限のネガティブリストではなく、関連成分を含む製品がCBEC小売輸入を通過できないという意味でもありません。
「重点注目」のより正確な意味は、管理敏感度の高い原料を含む製品について、中国市場参入前に専門的なコンプライアンス評価を完了し、海外での適法使用証拠、製品品質安全資料および中国市場経営コンプライアンス計画を事前に準備するよう企業に提示することです。
備考: 具体的な輸入申告資料の要件は、製品、申告税関および実際の管理状況により異なる場合があるため、実際の輸入時に管轄税関の最新要求に従ってください。
CBECがもたらすのは中国市場参入の利便性であり、コンプライアンス免除ではありません。